1ヨージャナ(由旬・ゆじゅん)。古代インドの距離の単位で、1ヨージャナは「牛車が1日に歩く距離」だという。天候や交通状況、牛の機嫌もろもろ考えれば、現代人の私たちから見ると何とも頼りない単位である。おおよそ11kmから14km。仏典でもよく使われる。
ゴータマがブッダガヤーでさとりをひらいたのちに、五比丘のいるベナレスへと向かう際の様子を仏典ではこう伝えられている。
「アーサーラ月(6~7月)の満月の日に、バーラーナシーに行くことにしよう」と、14日の早朝、ちょうど夜明けの時刻に鉢と衣をたずさえて、18ヨージャナの距離の旅路につかれた。
現在、ブッダガヤー(菩提樹)からサールナートまでよく舗装された高速道路(のような道)を通り約248kmだから、18ヨージャナ(198km〜252km)は、頼りない単位のわりには正確である。
因みに、王舎城近郊にいたゴータマ・ブッダが幼馴染のカールダーイの求めに応じて、故郷であるカピラバストゥに帰る時の距離は60ヨージャナ。660km〜840kmで、こちらは実際の距離より200〜300kmほど多いよう。1日に1ヨージャナずつ進んだようで、まさに牛の速度と同じに歩みを進めていった。
牛はヒンズー教では神聖視され、インドの町には犬と同じくらいにいる。他にもリス、ネズミ、鶏、ヤギ、羊、猿、馬などよく見かけるし、郊外であればジャッカルやクジャク、コブラ、トラ、ライオンもいるという。
人間だけの社会ではなく、他の動物たちも社会の一員としてあるインドにとってヨージャナという単位は至極自然だ。合理性や効率化のみを追求するあくせくした自分本位のあり方から遠ざける働きがあるようにも感じる。
サールナートが鹿野苑と呼ばれることも興味深い。
なぜ鹿なのか。
名前の鹿の王の因縁話によるというが、ベナレス北東10kmほどのところにあるサールナートはゴータマの頃から聖地として、各地から聖仙が集っていた。
ヒンズー教の神々の動物のイメージがあまりないところを鹿が象徴しているのか。
妄想が膨らむ。
#sarnath
#varanasi
インド仏跡巡礼6
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