祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響あり
『平家物語』の冒頭でも詠われ、日本人にも親しみ深い”祇園”という言葉の響きは、ゴータマ・シッダールタに土地を寄進した祗陀(ぎだ・ジェータ太子)と、その土地をゴータマ・シッダールタに寄進するために金貨を敷き詰めて購入した須達多(すだった・スダッタ長者)に由来している。
そうして寄進されたところに僧院が建ち、祇園精舎と呼ばれ、ゴータマは雨季に弟子たちと過ごし説法を行った。
でも現在は煉瓦の基壇部分のみを残して建造物は何もない。
7世紀、玄奘三蔵(三蔵法師)の記録では、荒廃甚だしくも伽藍はあり住民もいるとある。その後のムガル帝国でイスラム教が台頭するにあたり、破壊を恐れ多くが土で埋められたという。
ゴータマが説法したと言われる香室の近くに巨大な菩提樹があり、葉と実を拾った。
仏跡ということで各国の仏教僧が瞑想したり読経する声があちこちで聞こえてくる。
空気が澄んでいてどこまでも透明で、とても、清々しく、いつまでも佇んでいたい気分にさせられる。
ゴータマが教えを説いていくにあたり、
ラージギル(王舎城・マガダ国首都・竹林精舎)周辺ばかりでなく、ベナレスをはるか越え、サーヴァッティー(舎衛城・コーサラ国首都・祇園精舎)でも説法したのは、サーヴァッティーが大国であるコーサラ国の都であり、交通の要衝だったことが考えられる。
祇園精舎はサーヴァッティーから托鉢できるくらいに遠過ぎず、喧騒から離れることができるくらいに近過ぎない場所に建てられた。
現在の荒廃した舎衛城跡からは想像もできないが、ゴータマはここで説法することで多くの人に伝わるという確信があったに違いない。
貨幣経済が発展するなか、王族やクシャトリヤの権力や武力の他に商人の財力も、当時のインド社会では看過できないものであり、王や商人を巻き込んで巨大な影響力をもって拡大していった、ゴータマのサンガの有り様を祇園精舎は象徴している。
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インド仏跡巡礼1
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